第2回は将棋で ご協力いただいている、
日本将棋連盟、片上大輔五段にお話を伺いました。

プロフィール
片上 大輔(かたがみだいすけ)
1981年8月28日生まれ
広島県出身。
初の東京大学卒のプロ棋士。東京大学法学部卒業。
森信雄七段門下。
・主な成績
 竜王戦 3組
順位戦 C級1組
2007年11月8日 通算100勝を達成
・昇段履歴
1993年 6級
1996年 初段
2004年 四段
2006年 五段
・著書
3手1組プロの技
(2007年8月、毎日コミュニケーションズ、ISBN 978-4-8399-2551-2)


【インタビュー】

-将棋の醍醐味や魅力などを教えてください。
やっぱり、奥が深いことですかね。
将棋って言うのは完全に、自分で全てを決めることができるのですけど、
自分でいくら考えてもわからないところが、しばしばあるのですね。
そういうところはやっぱり、面白いなと思いますね。

-将棋は、対局前に対局相手がわかりますが、
相手がプロだったら、どういう戦法が得意かわかりますよね。
その時は、なにか対策とかなさるのですか?
それも個性が出ますね。
最善かどうかはわからないのですが、プロとして、
相手の得意な戦法を堂々と受けるという棋士が圧倒的に多いです。
逆に、得意な戦法だけは絶対に指させないというタイプも多くいます。
僕も、昔は、相手の得意な球は指さないタイプだったのです。
でも、最近は、ちょっと考え方も変わってきて、
相手の得意な分野で戦うのも、また勉強かなと思っています。
プロはずっと戦っていくので、
その一局だけに関して言えば最善でも、
長い目で見れば、その一局で終わりではないのですね。
そういう風に考えていくと、どうするのが、最善かは、本当にわからない。
それは、将棋のわからないことの一つですね。

-将棋で勝つために、必要なことはなんですか?
執念ですね。
将棋っていうのは、全部が決まっているので、
結構、心の揺れ動きが出るものなのですよ。だから、
将棋が強くなるためには将棋を好きになることがなによりも大事だし、
将棋で勝ちたいと思えば、その勝ちたいという執念が大事なのです。
ですので、勝つために必要なのは“執念”だと思います。
あと、日々勉強しているということも、自信に繋がりますね。
でも、勉強したことが、そのまま役に立つということは、
テストと違って滅多にないのですが。でも、
勉強しているという自信が、盤上に自然と出るということはあります。

-将棋や対局に臨むに当たっての信念などがあればお願いします。
最近思うのは、周りの色んな状況だとか、そういうのに、
なるべく影響されないように、いつも同じ気持ちで指すということです。
といいますのも、プロになると、とっても大切な一番だったり、
こういちゃあなんだけど、ちょっと軽い対局があるのです。
そういう周りの状況や、昨日嫌なことがあったとか、
今朝いいことがあったとか、そういう色んな状況によって
気持ちの持ち様が変化するのですね。だから、僕は、なるべく、
いつも同じ心境で、将棋を指せるように努力しています。
それを抑えるっていうのは、なかなか難しいことでもあるのですけど。

-勝ちたいという執念と、
さっきおっしゃった平常心を保つということは、かなり繋がっていますよね。

繋がっているかもしれませんね。
勝ちたいと思うことが自然になってこないと、駄目なのかな。
勝負が進んでいくうちに、これはもう「負けだ」ってことになるのですよ。
あるいは、もうこれは、「勝ちだ」ってことになる。
もう勝ちだと思って、相手がもう駄目だと思えば、
そのまま勝つのですけど、
「もう勝ちだ」とこちらが思った時に、
相手がまだ諦めていないということになると、
勝負がひっくり返る、ということがしばしばありますね。
だから、こちらがもう勝ちだと思って、
相手がもう駄目だと思い込んでしまえば、
相手は、小さなチャンスに気づかずに終わっちゃうのですよ。
「もう、勝てない」と思っても、
もうひと頑張りするかどうかってことが、大事です。
将棋の一局って結構長いので、
長い一局の中で、そういう場面が必ずあるのですよ。

-将棋を通して、子ども達に伝えたいことは、なんですか?
やっぱり、礼儀ですかね。
将棋が強い子っていうのは、やんちゃな子が多いのですね。
でも、そういう子が、だんだん将棋を学んでいくにつれて、
落ち着いてくるのですよね。
それは、やはり将棋を通して、
自然に、礼儀を学んでいるのではないかと思いますね。

-将棋を通して、何か学ばれたことがあれば、教えてください。
難しい質問ですね(笑)
まぁ、やっぱり、ベタですけど、
筋道を立てて考える力っていうのは身に着くと思っています。
また、将棋を長いことやっていて思うのは、
勝負の尊さみたいなものは感じるかなと思いますね。
一生懸命やった結果、勝負がつくというのは、
厳しいけれども、美しかったり大切だったりしますね。
残酷な反面、他では無いもののような気がします。

-プロと、プロになれない人の違いはなんですか?
わからないです(笑)
単なる勝ち負けの結果です。
それ以外、なんの要素もないんです。
同じくらいの実力で、同じくらいの年齢で、同じくらいの時代を戦って、
お互いにライバルで、勝った、負けたという関係のなかで、
ある人はプロになり、ある人はプロになれなかったということが、
往々にしてあるんですね。
それを受け入れないと将棋の世界は成り立たない。
だから、本当はもうちょっと良い制度があるのかもしれないけれど、
本当は、その人もプロにして上げた方がいいのかもしれないけれど、
どっかで線を引かなければいけない。

-将棋は美しいというお言葉が印象にのこったのですが、
美しいとはどういうことか、詳しく教えてください。

上手くいえないんですけど、非常に、理不尽なんです。
一局の対局で、色んなものを得たり、失ったりするんですよ。
将棋で勝負がついて、勝者がいて、敗者がいて。
それを受け入れて、日々僕らプロは戦っているわけですよね。
それってある意味、美しいことで、
将棋の勝負っていうのを大切にしているってことが、
とても尊いことなのかなと最近は思う様になってきています。
そういう、勝ち負けの真剣なやり取りも、
プロになったらなったで、みんなとっても強いんだけど、
ある人は名声を得たり、富を獲得するのに、
ある人は貰えないわけですよね。
その差っていうのは、本当に紙一重なんですけど。
それを受け入れているからこそ、
将棋の世界はあるわけで、それはやっぱり、すごい大切なことなのかなと。
そういうシビアな所は、ちょっと他の世界にはないかなと。

-将棋の美しさは、負けたりしたことを受け入れる潔さにも関係があるのですね。
そうですね。一回の勝ち負けで、
得られる報奨にかなりの差が出る勝負ってのが、あるわけですよね。
そこで、なにか起きてもおかしくない。
将棋の世界では、絶対にその様なことはないのです。
不正が横行したりとか、もっと悪い事件が起きたりとか、
その様なことは絶対ないですから。

-どこかで勝負を大切にするという様な教育を受けるのですか。
そういう教育を受けるわけではないのですが。
将棋の世界に長年いたら、みんなが自然とそうなります。

-先輩から教わるわけでもないのに、みなさんその様な境地に達するのですね。
そうです。
少なくとも今いるプロはみんなそうです。
過去はどうだったかとか、未来はどうなるかとかは、
わからないのですけど、僕とか、僕と同じ世代のプロは、
勝負を大事にしたいと思っていると思います。
とにかく、大事なものが懸かっていようとなかろうと、
とにかく、勝負を大事にする。
それが将棋の醍醐味であり、美しさなのかなと思います。

インタビュー後記
将棋は美しいという言葉がとても深く印象に残りました。
また、プロの将棋界の厳しさを少し知ることが出来、
そのプロの棋士の精神性はとても勉強になりました。
日本将棋連盟の片上 大輔様にインタビューいたしました。

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